<ラジオ局のブースの中> 「ええっ、もしかして!律さん、いきなり恋話のカミングアウトですか〜っ?」 「いゃ〜ん、絵梨香ちゃん超ジェラシー!!!」 目の前に鎮座している、目下人気急上昇アイドル、立花絵梨香が喚きたてた。 甘い・甘い・あま〜ぃ声で、まつ毛バサバサの黒曜石の瞳で、誘うような上目使い・・・ いや、それ魅力的だけど、使い何処間違ってるから。 冴嶋 律は、女である。確かに胸はぺったんで腰も細く、おまけに背が高いうえ、 ハスキーボイスで、顔に関しては中性的色気があるものだから、男女共に人気が高い 役者である。 だからというか、昔からこういう偏った好意をもたれるのは頻繁で その日常がこれである・・・・慣れっこだけど胸やけしそうな甘さだった。 ふっと、タメ息まじりに吐息を吐き、ピクリと片眉を上げ下から斜めに絵梨香を見つめる。 「あのさぁ、最後まで静かに聞いてくれる? (#-∀-)」 一応は制止を試みるも、彼女の忍耐はたったの30秒程で途切れ、もう大げさに体を クネクネしながら鼻にかかった甘え声で、まだブリブリと続けだした。 「え〜っ、でも〜っ、絵梨香はぁ、律さんにあこがれて芸能界に入って来た口ですし〜っ」 「あっ!でもでもダメですよ〜っ律さん」 |
|
「今のフリートークのお題は、私の宝物についてですから脱線しちゃってますよ〜ん」 「チッ、だから最後まで黙ってききなって!」 イライラと長い指でテーブルを小突きまくる、もうさっきから煙草の本数も鰻上りだ。 「あ〜あはは。律さん怒っちゃった?」 「ごめんなさい許してください!何でもしますってば〜っ」 両手を合せて、拝むようなポーズで謝ってくるのを、ツーンだ、とばかりに無視していたら、 だんだん本気で焦りだしたのか、声のトーンも小さくなり、手元にあったペットボトルの水も台本に 零したりとわたわたし始める絵梨香。 「ぷぷっ、あはは・・・いいよ許したげる」 律は、綺麗な笑顔をみせ、ぐりぐりと絵梨香の頭を撫でてやった。 そんな、彼女たちをさっきから生唾ものでドキドキ興奮しながらも黙って見守る男達がいる。 そうそれは、ブースの外にいるラジオクルー達なのであった。 「寛治さんオレ、この仕事初めて、今日ほど幸せ噛み締めた事ないっす!!」 「・・・あぁ、まったくだ、これじゃ世の男共も喰いっく筈だわ」 |