Sweet sour

 学校から帰る途中だった。一人の少年が手を伸ばし

何だか必死な様子で、垣根の前でジャンプしている



(何だろう?) ちょっとした興味で、彼の指先に注目した。

白い紙だった。テスト用紙に違いない。いたずらな風にでも飛ばされたのか?

背後から近付き無言でテスト用紙を取ってやる。

 点数が見えた・・・・・・・・・・52点



 「・・・・微妙だな」
     
感想が思わず口にでた。



バッとひったくられた。

 「わっ!見んなバカ返せ!!」



目と目が合った、せっかく取ってやったのにと少しムッとした。

しばしお互いに無言である。気を取り直し


 「何か、私に云うことはないのか?」


言葉の裏に感謝を表せと皮肉たっぷり込めた台詞で、

 

思いきりプレッシャーをかけてやると、彼は小さい体で

 威嚇するように胸を反り、顔を上げこう答えた。


  「でっけぇ女!!


 (おい、待て!ふざけんじゃね〜ぇ!)と心の声が木霊する。
                        
 眉間の皺も3倍増しだ。だから思わず


  ちっせぇ男!!


 売り言葉に買い言葉だった。互いににらみ合っていたが、なんといっても

こう背丈が違うと見下ろす体となってしまい、ふふ〜んと優越感にひたれた。


 それを気配で感じ取ったのか、少年は真っ赤になりさんざん悪態を

ついたあげく、一人で怒って走り去ってしまった。

その姿を見つめながら、なんだか雛を守る親鳥が必死になって自分より

倍以上も大きいドラ猫に挑む姿が浮かんでしまい、知らず知らず

ニャリと笑んでしまった。


 「・・・・・くっくっくっ、面白いおもちゃを見付けた」

 「しかし可愛い顔して性格は悪魔だね、あれは・・・」

 とポツリとつぶやくと平静な顔へと切り替え鉄面皮の面をつけ、家路についた。

彼が小鳥なら彼女は・・・彼女は、ずるがしこくも美しく気高い妖狐だった。


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