「はぁ~、しかしマジで律と絵梨香のトークってSとMの王道だよな」

  「いいっすね~萌えの原点ここにあり、つう感じで・・・」

   「あのさぁ、これもう見ました~?夏コミの新刊なんですけど~」

  「出た~ぁ、律X絵梨香の18禁本!」

と野郎どもが盛り上がっていると、

  「ちょっとちょっと」

とプロデュサーが蒼白な面持ちで、右手をヒラヒラさせ、あれあれと合図を送った。

 全員 ━━━━Σ(゜0゜;)━━━━!!

 ガラスの向こう側にぴったりと張り付いて、底冷えするような凍える瞳で律が静かに怒っていた。

左手で、クイクイと何かを命令する仕草をみせ、それから口がゆっくりと動いた・・・・。



   『 そ・の・本 よこせ! 』


  全員 「そんな殺生な~っ!。Σ( ̄ロ ̄lll)」


幸せの頂点から奈落の底に突き落とされたのは、いうまでもない・・・ご愁傷様である。

 バタン!と律がブース内に戻ってきた。

何故か真っ黒なオーラを漂わせた彼女へ、不安げに絵梨香が尋ねる。

  「どうしたんですか律さん?」

  「はぁ~っ、やってらんね~っもう皆腐ってやがって・・・・・これ見てよ!」

 バン!と同人誌をテーブルに置く。

それを見た絵梨香は、興味深々といった様子で中味を確認するべくパラパラと捲り始めた。


天使のような微笑みさえうかべている。




その様を、信じられないといいたげに見つめる律。

   (・・・何なんだ、その余裕は・・・何なんだそのすべてを許すかのようなキリストばりな微笑みは)

    (細かい事にいちいち目くじらを立てない、大人な態度ってやつですか?へ~そうですか、

   だったら、私は大人になんかならなくてもよい!!)


などど心中嵐吹き荒れる律に対し、絵梨香は楽しげにこう語る。

  「あ~っ、絵梨香この作者知ってますよ♪」

  「たまに絵梨香の事務所にファンレターと一緒に送ってくれますもん」

  「絵とか綺麗なんですよ??」

ほらほらと、えげつないページを顔面に押し付けられ、それを振り払うように尖り口調で問い返した。

    「はぁ?何であんた平気なの・・・こ・・こんな・・」

真っ赤になって言いよどんでいると、賺さず絵梨香が口をはさむ。

  「え~っ、だって耽美ものってジャンル的にも今じゃあたりまえって感じ?」

  「ああっでもでも、耽美で定義はあってるのかな~?退廃的??う~んと、二次創作生もの???」


ぐるぐると絵梨香が悩み、頭をかかえだしたので、その話は終了とばかりに遮った。

    「・・・・どっちでもいいわい!!」

  「それよりさぁ・・さっきの話の続きなんだけどね」


 律の思い出話しが再開した。




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