「・・・同情して、連れて逃げたりはしないだろうね?」
「はっ、そんな事して何になります?ボクだって命は惜しいですよ」
「怪しいな〜その顔は」
「そんなに怪しいですかボク?」
「デザイナーの吟愁が、こんなに美人だとは聞いてない!」
「それも、金と銀の組み合わせが、似合いすぎてて腹が立つ!!」
「いや〜、そう云われましても・・・よわったな〜」
「あっ、そうだ!」


 八戒である吟愁が、閃いたという表情を作り、徐に三蔵の腰を抱き引き寄せると
嫌がる三蔵の抵抗を物ともせずに、一番出血の多い秘部に細くて長い指を這わせ
血と精液で濡れる襞に指先を無理やり含ませ、ネチネチという音と共に薄紅色の粘液を絡め取る

「んっんっん!てめぇ何を・・」
「ちょっとだけ我慢して・・・」

 信じられない事が起きショツクで怒りに震える三蔵に、子供をあやす様に甘く優しく囁く八戒
指先についたグリスのような桃色の雫を、素早く三蔵の唇にひいてやるといっそう美貌が引き立った

「ねっ、綺麗でしょう」
「ボクのメイク技術と花嫁衣裳で彼をもっとずっと艶やかにしてさしあげますよ」
「ね?見たいんじゃありませんか?」

 そういうと吟愁はニッコリと微笑んだ、ゴクリと溜まった唾を呑み下す李影
すっかり降参モードの李影は、黙って塔を降りる階段へと続く扉を開いた



無事に難関突破を果たした八戒、戦利品であるお姫様抱っこで運んで来た三蔵を
ひょいと大理石の貼られたエントランスに降ろす、そこには三蔵の身を按じていた悟空と悟浄の姿があった
二人は、安心と喜びの表情を浮かべ、手まで振り回してものすごく最高に明るい声で景気よく
冗談とばしながら駆けつけようとした

「さんぞう、おっかえり〜!!!」
「塔のてっぺんってどんな部屋だった?」
「美味いものとかいっぱい喰えた?」
「うるせぇ、お前は喰い物ばっか・・・ちったあ三蔵の身も心配してやらにゃ気の毒だろうが!」
「さんちゃん、こんなところで嫁入りなんかされたら、悟浄ちゃん泣いちゃうから!!」
「なーんてな・・・うっ!?」

 今まで無言で俯き唇を噛み締めていた三蔵は、正面に立つ八戒をギンと睨み付けている
二人の何とも云えない微妙に重い空気に、悟浄と悟空のはしゃいでいた気持ちが
サーッと萎んでいく、そしてこんなに怒り心頭な三蔵に、(八戒お前なにしたんだよ!!)
って疑問と不信感で息を詰めたその時、三蔵の平手が八戒の頬を張った

 

 ――― バ チ ン!!!―――



「痛いですね、助けてやったのに何ですかその態度は・・・」

しれっといってのける八戒、三蔵の目の色が一瞬で冷たいものへと変わった

「お前、どこまでオレを愚弄すれば気が済むんだ!!」
「なんの事ですかね?」
「ボクには感謝こそされ、こんな事される謂れはないのですが・・・」
「お前、オレにあんな事しておいてよくもまぁ、そんな口がきけるな!」
「あんな事?」
「あなたの云うそれって何の事やら、ハッキリ云ってもらわないと鈍いボクには通じませんが」
「オレに説明させる気か?この二人がいるのにか??」
「あはは・・・それはいいですね、どんな風に説明するのかボクも訊きたいです」
「冗談じゃね〜ぞ、ふざけるのも大概にしろ!!」
「ええ、冗談では済ます気ありませんよ」
「ボクは、相当アタマにきてますからね!!」


「ちょっと、ちょっと!ちょっと待った〜!!!」


「おまえたち、何いきなり喧嘩おっぱじめてんだよ?」
「取りあえずここは、無事に出会えてよかったって喜びあう大切なシーンだよな」
「・・・なあおい、オレ間違ってるか悟空?」
「ぜんぜん間違ってないよ」
「優しい八戒と寡黙な三蔵じゃなきゃダメじゃん!」
「こんな、いがみ合う感情的なのさ、ふたりともキャラ違うよ、絶対変だ!!」
「・・・って、三蔵怪我してるの?」
「足のとこ血が流れてきてるよ」


 ビクッと三蔵の肩が大きく揺れた、項垂れて服の裾を握りしめている
その反応と様子に悟浄の中の霧が嫌な方向で明け始めた・・・なんだ、そういう事かよと
悟浄の眉間におおきな皺が刻まれ、どす黒いもやもやが胸を圧迫する


「三蔵、風呂入れ、オレが全部洗ってやる」
「なっ、お前・・・」
「悟浄、何云ってるんですか三蔵は怪我してるんですよ・・・だったらボクの方が」
「なんだよそれ、大変じゃんか、おれも手伝う」
「来るんじゃねーっ!オレひとりでやる!!」
「傷の手当ても何もかもだ!」


 そう云うと三蔵の手を引き塔内の警護に湯殿を案内させ、嫌がる三蔵を裸に剥き
熱いお湯を頭からぶっかけた、どんどんどんどん浴びせられる大量のお湯に酸素
を取り込むのをわすれそうなぐらいで、沖に上がった金魚のように瀕死の状態で床に
転がされる三蔵、ぜぇぜぇとなんだかとても苦しそうだった


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