さっきから、2人のやり取りを静かに眺めていた悟空と八戒、
ずっと我慢の子だったのだけど・・・とうとう先に悟空のネジがキレた。

「なぁ、くくっ・・八戒オレ・・・」
「も、もう・・だっ駄目だ〜限界・・・助けて〜っ、笑い死にしそう!!」
「ぶっ、くくっ、ぶわははははは〜っ!」

可笑しさが、伝染してくる

「なに、笑ってるんですか・・・ぷぷっ・・あのお二人は至って真剣なのですよ〜」
「それを・・笑うなどと・・くくっ、駄目ですよ〜、それに三蔵にも失礼ですってば」
「って・・・2人が恋人同士・・うふ、傑作です!うふふふふ〜つっっ!!」



 ギン!!


 八戒の腕の中から、底冷えするような凍てつく視線を感じた。
勇気を出して、ちらっと見たとたん後悔する

(ひ〜っ怖いです、三蔵めっちゃ怒ってますぅ)

目頭に映る恐怖の残像に体の機能が完全停止する
息をすることさえも難しい・・・これが、君主政の恐怖支配というやつか!?
などと、とんちんかんな事を考えていたら八戒の腕の中から
すすっと三蔵が身を起こし、静かに立ち上がった。
そして李影に近付くと、悟浄を指さしドスの効いた声でこう云った

「ふざけるな、こいつはただの下僕だ!!」
「なっ!ひでっ!」とまた悟浄。

他のふたりも三蔵の元に駆け寄って来た

「ふーん、まぁいいでしょう、おいおい分かる事ですしね!」

と、肩をすくめ、それからちらりと三蔵をみる李影
いや、ちらりどころではないかも知れない・・・

「おい、さんぞ〜っあいつ、お前にもんのすご〜い、熱視線送って来てるぞ!」

と、悟浄が背を向けていた三蔵にコソコソ声をかける、云われた三蔵が奴に視線を送ると
バッチリ目が合って、李影がニタリと笑った。

「ひつっ!!!」

取って喰い付きそうな笑みに、戦慄する。もし、三蔵が猫だったら、
全身毛が逆立ちしっぽがぶわっと大きく
ふくらんでいたかもなぁ、という状態であった。

その様子をみた李影、タメ息をつく。

「は〜っ、まったくさっきから君も、かわいくないったら・・・」
「そんなんだからね〜江流君」
「つれない君に少しばかり怒っている僕は、」
「面白い、お仕置きを考えさせて頂きましたよ!!」

と、ニヤニヤしながら三蔵の額を指さした。

「君の、額に頂いてるチャクラ、すっきり綺麗に消しときましたから!」
「あぁ?何云ってやがる・・・」

李影の言葉に内心青ざめながらも、余裕のふりで落ち着こうとしていたのに、
無邪気な悟空が、これまた無邪気に割って入って来た。

「なになに?うわっ、本当だ!こんな簡単に消せるものなのかよチャクラって!」
「バカな・・・神でもないのにありえませんよ」

八戒が、驚きの表情で三蔵の額を傍らで見つめている

「てめぇ、ふざけたまねを・・・」

どうやら、信じたくはないが現実にチャクラは消えてしまっているらしい

「もうこれで、君は三蔵法師の資格はありません、ただの人間です」
「だからこれも、宝の持ち腐れでしょうからボクが預かっといてあげます!」

そう云いながら、肩にかかる経文を一瞬にして自分の手元に引き寄せた。

「何これ?マジック?それとも、テレポーテーション!?」

悟空が、びっくりして疑問をなげかけた

「あっ、ボクの力やっぱり気になります??」
「さっき、そこのめがね君が、云っていましたあれ、否定せずに肯定してみてください」
「えっ、神様だってのか??」
「ふん、バカをいえ!奴は、ただの人間だ」
「ガキの頃からの腐れ縁だからな、あいつの出所は、厭でも知ってるぜ!」
「江流君!」
「あぁ!?」

    ズドォーン!ゴゴゴゴォーッ!!!


いきなり、地面が揺れだし地の裂け目から水柱が吹き上がり、龍の形を模ったかと思ったら
咆哮し、蜷局をうねうねと巻いている。

「普通の人間がこんなもの作れますかね?」

と得意げに胸を張ってみせる李影


「それと、よく似たのを妖怪の王子のとこで見たことがあるんだが・・・」
「あぁ、召喚獣ですね!なんか、懐かしい気がしたんですよ!」
「でもよ、あれは炎だろ、こっちは水だぜ!」
「まぁ、パクリってやつなんじゃね、三蔵の友達、芸がねぇのな!」
「友達なんかじゃねーよ、ただのストーカーだ!」
「へぇ、ガキの頃から?年季がはいってんな〜!」
「さぞかし、女の子のように美しいお子さんだったんでしょうね〜、その頃にお会いしたかったです!!」
「ふん」

三蔵が、八戒の台詞に少しばかり頬を染める
それに気が付き、なんかイライラする悟浄



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